インプラントの起源

現在、インプラント治療は、歯を失った場合に歯本来の見た目や機能を取り戻す治療として、多くの方が治療を受けています。このインプラントは、今となっては珍しい治療ではありませんが、インプラントがまだなかった時代、歯を失った人達はどのような治療をおこなっていたのでしょうか。

インプラントの歴史

インプラントの歴史は古く、起源は紀元前にまで遡り、インカ文明の時代のミイラから、サファイアの素材の歯根が発見されたり、エジプト文明には歯が抜けてしまった箇所へ、象牙や宝石などを埋入する試みがなされていたという報告もあります。中には、実用的なものではなく、亡くなった方が来世で不自由することなく食べ物を噛めることを願い、一種の儀式として死後埋込されていたとも考えられていました。ですが、20世紀になってから発見された7世紀のマヤ文明の時代の20歳代女性の下顎の骨に、天然の抜去歯2本と、歯根とすでに一体化した貝殻が埋込されていたということが報告されており、これが生前におこなわれた世界で最初の実用的なインプラントだといわれています。これらのことから、永久歯が抜けてしまった場合の治療法の一つとして、インプラントはかなり昔から存在していたということが考えられます。それ以降、エメラルド、鉄、金、サファイア、コバルト、クロム合金などの様々な素材が、失った歯の代わりとしての使用されてきましたが、どれも良い結果を得ることができずにいました。しかし、1913年に歯科医師グリーンフィールド(E. J. Greenfield)が円筒型のインプラントを開発したことで、近代インプラントの幕が開けられました。その後、1930年代にはスクリュー型、1940年代にはらせん型、1961年にはChercheveのスパイラル型、1970年にはLinkowのブレード型、1978年にはKawaharaのサファイヤインプラントなどといった、様々なインプラントが考案されましたが、人の体には自分以外の細胞や人工物が体内に入った場合、拒否反応を起こしてしまう性質があるため、どの素材も異物として認識されてしまい、経過は極めて悪いものでした。

チタンインプラントの誕生

現在のインプラントが、一般的な治療法として認められ世界中に普及したのは、チタンという素材が骨と強く結合する特質を持っていることが発見されたからです。この性質を発見したのは、スウェーデンの学者であるペル・イングヴァール・ブローネマルク博士です。1952年にブローネマルク博士は、ウサギを使って骨が治癒する過程において、骨髄がどのような役割を果たすのかという研究をおこなっていました。実験後にウサギの脛に埋込したチタン製の生体顕微鏡を取り出そうとしたところ、骨にくっついてしまい外すことができなくなったことから、チタンは骨に拒否反応を起こさずに結合することを発見したのです。このチタンと骨がしっかりと結合することを「オッセオインテグレーション」(骨結合)と名付け、それ以来様々な実験をおこない、13年の研究の末、ついに1965年に人間に臨床応用したのです。なぜそれが歯科だったのかというと、顎の骨は体の内部と外の世界との境界面であったからです。

世界で始めてブローネマルク・システムによるインプラントの治療を受けたのは、先天性の病気のため、顎の骨が弱く、歯も数本しか無いため、食事や会話に不自由な生活を送っていたヨスタ・ラーソンという男性でした。手術の際、下顎にチタンのインプラント体を4本埋入し、3ヶ月〜6ヶ月の治癒期間を経て、チタンが骨に強く結合していることを確認してから、人工歯を装着しました。手術は無事に成功し、インプラントは彼が亡くなるまでの41年間もの間、問題なく機能していました。この治療により、インプラントの長期に渡る安全性が証明されたのです。

現在のインプラント治療

ブローネマルク・システムインプラントによって、インプラントの歴史は大きく変わりました。現在でもインプラントの研究がおこなわれており、様々な治療方法も開発されていることから、以前までは治療をおこなうことができなかった難しい症例でも、近年では治療がおこなえるようになるなど、インプラント治療は日々進歩しています。

インプラント治療は、正しい治療をおこなえば、上顎で95%、下顎では99%という高い成功率を誇る治療方法です。顎の骨にインプラント体を埋入する外科手術を伴いますが、天然の歯とほとんど変わらない美しさと、噛み心地を取り戻すことができます。さらに、毎日のご自身での正しい歯磨きなどのセルフケアと、大分県の歯科医院での定期的なメンテナンスをおこなうことで、半永久的に快適に使用することも可能なのです。

 

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