インプラントと骨の結合のメカニズム

インプラントは、外科手術によって顎の骨に埋入したインプラント体が、骨としっかりと結合することで歯根と同様の役割を果たすため、天然の歯と同じような噛み心地を得ることができるのです。インプラント体にはチタンという素材が使用されており、このチタンが骨が結合する特性を利用した治療方法がインプラント治療なのです。私たちの身体は、自分以外の細胞や人工物が体内に取り込まれた場合に、強い拒絶反応を起こしてしまいます。これは自己防衛能力の現れなので悪いことではないのですが、チタンが登場するまで様々な素材を人工歯根として埋入しても身体が異物と認識してしまうため、良い結果を得ることができませんでした。しかし、チタンによってインプラントは大きく飛躍を遂げるのです。

チタンの特徴

チタンは生体親和性が高く、骨と結合するという特徴があります。生体親和性の高さは、他の金属にはないメリットです。さらに耐食性にも優れており、酸素と結びつくと「不動態皮膜」という膜をすぐに形成するため、金属アレルギーを起こすこともないので、骨に埋入しても害となることはありません。また、軽くて加工しやすいという点で、インプラント体以外にも人工関節の材料としても使用され、多くの患者さんの身体の一部として機能しています。

オッセオインテグレーション(骨結合)の発見

スウェーデンの学者ペル・イングヴァール・ブローネマルク博士が、1952年にウサギを使って骨が治癒する過程において、骨髄がどのような役割を果たしているのかという研究をおこなっていました。実験後、ウサギの脛に埋め込んだチタン製の生体顕微鏡用を取り出そうとしたところ、しっかりと骨にくっついてしまい、はがれなくなっていることから、チタンが拒絶反応を起こすことなく骨と結合することを偶然に発見したのです。ブローネマルク博士は、この現象を「オッセオインテグレーション」(骨結合)と名付け、13年に及ぶ様々な実験のすえ、歯科治療への応用を探り、1965年ついに人間に臨床応用したのです。世界で始めてブローネマルクシステムによるインプラントの治療を受けた患者さんのインプラントは、彼が亡くなるまで41年間もの間、問題なく機能したそうです。

インプラントと骨の結合のメカニズム

インプラント体の材料であるチタンは、身体に生体親和性が高く、身体に取り込んでも異物として認識されません。そのため、骨折した骨が再びくっつくといった、体が治癒していくメカニズムと同様のメカニズムがインプラント体の周辺にも及ぶのです。新しくできた骨は少しずつチタンの周囲に取りついていき、骨がさらにチタンの表面の細かい部分にまで入り込んでいくことで、インプラント体は骨の中に取り込まれた状態になっていくことで、しっかりと結合するのです。また、このインプラント体と骨の結合力は、インプラント体の表面の性状によってに差が生じることが研究によって明らかにされています。表面が滑らかなインプラント体よりも、微少に表面が粗くなる加工を施したインプラント体のほうが、十分な骨結合を得られることができるのです。肉眼では判別できないナノレベルの粗さですが、その微少な差がインプラント体と骨の結合をより強固にするのです。

骨結合の注意点

インプラント体を埋入する外科手術をおこない、インプラント体と骨が結合するまでにかかる期間は、骨が回復する速度に個人差があるため、2週間〜3ヶ月程度が目安です。そのため、インプラント体が骨との初期固定を得るまでは、余分な刺激を与えずに安定させることが望ましいです。この期間に過度な力を加えてしまうと、インプラント体を埋入した周辺の骨や粘膜組織にダメージを与えたり、骨や傷口の回復が遅れたり、結合しかけた骨とインプラント体が安定しなくなり、初期固定が得られなくなる可能性があります。

通常、初期固定までの期間は回復の妨げにならないように、日常生活にも影響の少ない仮歯を使用し、骨が安定してから最終的な人工歯を被せるのですが、早く人工歯を使用したい場合は、骨量や口腔内の状態がいくつかの条件を満たしていれば、治癒期間を短縮し、即日に歯の装着までをおこなえる治療もあるため、希望される場合事前に大分県の歯科医院に相談してみましょう。

HAインプラントとは

従来のインプラント体はチタン製のものが主流ですが、中にはチタンの周りをハイドロキシ・アパタイト(歯や骨の成分)でコーティングしたタイプのものもあります。それらは、HAインプラント、HAコーテッドインプラントなどと呼ばれ、純チタンのインプラント体とは区別されることがあります。インプラント体とHAの間に生体のカルシウム等が介在することから、HAインプラントの骨結合は、「バイオインテグレーション」とも呼ばれます。

 

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