骨粗鬆症でもインプラントは可能か

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症とは、加齢や長年の生活習慣などによって骨量(骨密度)が減ってしまうことで、骨折を起こしやすくなっている状態、もしくは骨折をしている状態のことをいいます。

私たちの骨量は18歳くらいをピークに、年々少しずつ減っていきます。骨量が2~3割減ってしまうことで骨の構造が弱くなるため、結果として骨折を起こしやすくなり、骨粗鬆症になってしまうのです。骨量の減少は、加齢に伴う女性ホルモンの分泌量の減少に加えて、腸管でのカルシウムの吸収が悪くなったり、体内のカルシウムの吸収を助けるビタミンDを作る働きが弱くなるなどといった、骨の中のカルシウムの減少によって起こります。また、若い頃よりも食事量や運動量が減るといった生活習慣の変化も関係しています。

骨粗鬆症の原因

骨は絶えず活発な新陳代謝をしています。強くて丈夫な骨を保つために、古い骨は壊されて(骨吸収)新しい骨に作り変わっています。(骨形成) これを骨代謝といいます。しかし、骨のもとになるカルシウムが不足したり、加齢によって体内の骨を作るためのホルモンが不足してくると、骨代謝のバランスが徐々に崩れてしまい、骨形成よりも骨吸収が進んでしまいます。そのため、骨からカルシウムが徐々に減り、骨がスカスカになってしまうのです。骨粗鬆症は、特に女性に多い病気で、患者さんの80%以上が女性といわれています。女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、骨の新陳代謝に際して骨吸収をゆるやかにして骨からカルシウムが溶けだすのを抑制する働きがありますが、閉経期を迎えるとエストロゲンの分泌が低下するため、急激に骨密度が減るので同年代の男性に比べて早く骨量が少なくなるのです。

骨粗鬆症の危険因子

骨粗鬆症の危険因子(リスクファクター)には以下のものがあります。

  • 閉経の時期、痩せ型、家族歴など遺伝によるもの
  • 偏った食生活、運動不足、飲酒、喫煙、日光照射不足などの生活習慣によるもの
  • 胃の切除、糖尿病、甲状腺機能亢進症、高カルシウム尿症、ステロイド剤(グルココルチコイド剤)投与、原発性副甲状腺機能亢進症、腎不全などの疾患によるもの

骨粗鬆症でもインプラントは可能か

骨粗鬆症の方でも、しっかりと骨の状態を検査して適切な治療をおこなえば、インプラント治療は可能です。骨量が少ない場合でも、骨移植などにより再生させる治療法も確立されています。しかし、気を付けなければいけないことは、骨粗鬆症の治療のために骨を強くする「ビスフォスフォネート製剤」などの治療薬を使用している場合です。

ビスフォスフォネート製剤を使用している場合は、基本的にインプラントなどの外科手術は避けた方が良いといわれています。ビスフォスフォネート製剤は、骨を強くするために骨の代謝を抑えることで、骨からカルシウムが出ていくことを防いでいます。しかし、同時に新しい骨や歯茎などの軟組織を作る機能も抑制してしまうのです。そのため、インプラント体を埋入したところが細菌感染することによって、傷が治りにくくなってしまうだけでなく、最悪の場合は顎の骨が壊死してしまう「顎骨壊死」を起こしてしまうのです。そのため、服用している方は、主治医と相談してインプラント治療が可能か判断してもらう必要があります。

ビスフォスフォネート製剤とインプラント治療

ビスフォスフォネート製剤による顎骨壊死は、一旦起きてしまうと簡単に治すことができない病気のため、リスクを減らすための治療指標があるのですが、これまではビスフォスフォネート製剤の投与期間が3年未満で癌や透析、糖尿病などのリスクファクターがない場合はビスフォスフォネート製剤の休薬は不要でインプラント治療をおこなうことができ、投与期間が3年以上か3年未満でも他の疾患などのリスクファクターがある場合は判断が難しいため、主治医と歯科医師との間で検討する必要があるが、骨折のリスクが高くない場合は休薬することが望ましいとされています。しかし、ビスフォスフォネート製剤を休薬しても顎骨壊死のリスクを減らせるかどうかは分からず、むしろ休薬することによる骨折リスクの増加のほうが危険なため、顎骨壊死を防ぐために口腔内を清潔に保ち、感染を防ぐことが効果的であり、投与期間が4年以上の方や、顎骨壊死のリスクが高いと思われる方は、外科治療前2か月程度の休薬が可能であればおこない、外科処置2週間後を目安に投与を再開する、と変わりました。(2016年治療指標)

ビスフォスフォネート製剤を使用している方のインプラント治療で大切なのは、主治医と歯科医師が相談してインプラント治療をするかどうか、薬を休薬するかどうかを決め、治療をおこなう場合は、お互いに連携をとりながら治療をおこなうことです。

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