糖尿病の場合インプラントは可能?

糖尿病とは

糖尿病とは、体内のインスリンが不足したり、作用が低下したりすることで、血糖値が高くなる病気です。インスリンは膵臓で作られており、血液中に含まれているブドウ糖やアミノ酸といった栄養素を細胞に取り込む働きをしています。しかし、インスリンが不足したり、数があってもうまく作用しない場合は、食べ物を体内に取り込んでも細胞に取り込むことができないため、細胞は飢餓状態になってしまいます。これにより様々な悪影響を及ぼしてしまうのです。

糖尿病には「1型糖尿病」と「2型糖尿病」があり、糖尿病の方の多くは2型糖尿病です。

糖尿病が引き起こす悪影響

傷の治癒が遅い

糖尿病になってしまい、インスリンの量の不足や機能不全を起こしてしまうことで、細胞に必要とするだけの栄養や酸素を取り込むことができなくなることが原因で、傷を治す能力が低下してしまいます。

細菌感染を起こしやすい

通常、皮膚や粘膜が傷ついてしまうと、そこから細菌やウイルスが体内に入り込もうとします。そのときに防いでくれるのが白血球などの免疫細胞です。しかし、糖尿病のためにこの免疫細胞が十分に活動することができなくなることで、細菌やウイルスが体内に入り込むことを防ぐことができず、感染しやすくなってしまいます。

神経障害

神経には、感覚を司る知覚神経と身体を動かす運動神経、そして身体の状態を制御する自律神経があります。糖尿病になると知覚神経が障害されてしまうため、感覚が鈍くなります。この傾向は足において顕著に認められます。足に傷ができても気付きにくくなり、治癒が遅くなるため、足が壊死してしまう原因の一つになってしまうのです。さらに、運動神経も障害されるため、筋肉の動きが悪くなり身体を動かすのが難しくなってしまいます。

インプラント治療の際の注意点

インプラント治療は、インプラント体を顎の骨に埋入する外科手術を伴います。そのため、糖尿病の方がインプラント治療を受ける際には様々な注意点があります。

手術前の状態

1型糖尿病の方は、血糖コントロールがおこなえないためインプラント治療はできませんが、2型糖尿病の方は治療が可能です。しかし、インプラント治療をおこなうためには、HbA1c(血管の中でヘモグロビンがブドウ糖と結合したもの)が7.0未満であることが治療を受ける目安になり、空腹時の血糖値が180[mg/dl]以上の方はインプラント治療はおこなうことができません。

治療時の注意点

糖尿病の方は免疫細胞の働きが弱いため、細菌感染しやすいので、インプラント治療前に抗菌薬の投与をおこないます。体内にあらかじめ抗菌薬を含ませておくことで、細菌が感染しにくい環境に整えます。また、出血しやすい傾向にあるので、必要に応じて止血薬の投与や注射などの処置をおこないます。他にも、局所麻酔薬に含まれる「エピネフリン」は、高血糖を誘発する可能性があるので、配合されていない局所麻酔薬を使用します。

治療後の注意点

糖尿病になると傷の治癒が遅くなることから、インプラント治療後の歯茎や骨の回復が遅くなってしまいます。そのため、細菌感染を起こしてしまったり、インプラント体と骨の初期固定が得られずにインプラント体が抜けてしまう可能性もあります。その際、抗菌薬を投与したといっても、創傷治癒の悪さからくる細菌感染は予防できず、逆に抗菌薬が効かなくなる耐性菌の発生を促してしまう危険性もあります。そのため、治療前にしっかりと血糖をコントロールしておくことが重要なのです。

低血糖発作

インプラント治療時に、眠気、倦怠感、動悸、冷汗、けいれんなどを起こすことがあれば、低血糖発作を起こしている可能性が考えられます。このような低血糖発作は、放置すると昏睡状態に至る危険性もあるため注意が必要です。この低血糖性昏睡は、糖尿病の偶発症の中でも生命の危険がある重篤な状態なのです。もしも低血糖発作の症状が現れた場合は、低血糖性昏睡を起こす前の段階の症状と考えることが重要なため、砂糖やジュースなどの糖分を摂取させることが、昏睡状態を予防するために有効です。もしも、口から摂ることができない状態の場合は、ブドウ糖の点滴の処置をおこないます。ただし、昏睡状態の前に何らの症状が現れなかったり、もしくは現れても極短時間で昏睡状態に陥ったりすることもあります。なお、昏睡状態が後述する高血糖発作によるものであったとしても、これらの低血糖発作時の処置が、症状を増悪させることはありません。

高血糖発作

高血糖発作は、血糖コントロールがうまくおこなえない場合に、ストレスや手術などによって起こり、昏睡状態に至ることもあります。ただし、低血糖発作時の昏睡状態よりも徐々に発症するため、低血糖性昏睡ほどの緊急性はありません。予防対策として、インプラント治療前に、血糖値を測定しておき、血糖値が高いときは治療をおこなわないことで、高血糖発作時を予防します。高血糖発作を起こした場合は、インスリンの注射や生理食塩水の大量投与で対応します。それから専門の病院へ搬送します。

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