歯の仕組みを理解する

歯の構造

歯の上部に見えている「歯冠部」は、歯の神経である「歯髄」、歯髄を囲む「象牙質」、そして象牙質を覆う「エナメル質」という3層の構造になっています。

エナメル質

歯の一番外側の部分で、人間の体の中で一番硬い組織です。水晶(モース硬度7)と同じくらいの硬さがあります。約2~3ミリの厚さがあり、歯の表面に近くなればなるほど硬くなります

象牙質

エナメル質のすぐ下の層のことで、歯全体の主体となる部分です。歯髄を取り囲む組織であるため、象牙質が剥きだしになってしまうと、熱い物や冷たい物がしみたり、痛みを感じるようになります。

歯髄

歯の神経のことで、血管やリンパ管、神経繊維が通っており、象牙質に栄養を補給しています。虫歯などの処置で「神経を抜く」ことがありますが、この歯髄を抜く処置ということです。
歯茎の下部の「歯根部」にある「歯周組織」によって歯や歯の機能が守られています。その組織には、歯茎、歯根膜、歯槽骨、セメント質が挙げられます。

歯茎(歯肉)

歯茎は、歯頸部(歯が口腔内に露出した部分と埋伏した部分の境界付近)と歯槽骨の表面を覆い、歯と歯槽骨に強固に付着している粘膜組織です。その厚さは1~3mmといわれ、歯頸部に近いエナメル質を取り巻く内縁上皮と、外面より見られる外縁上皮に分けられます。また、歯と歯の間の歯茎は多少盛りがっており、その部分は歯間乳頭といわれています。健康な歯茎は個人差がありますが、ピンク色、または淡い赤色をしています。歯茎は、歯と頭蓋骨を繋いでいる神経や血管の保護をし、歯を支えながら異物や細菌などが組織内に侵入することを防ぐ働きがあります。炎症を起こしてしまうと赤や紫色に変色し、腫れてしまいます。

歯根膜

歯根と歯槽骨の間にある薄い膜のような組織で、「歯周靭帯」とも呼ばれます。噛む力の衝撃が歯と骨にかかった際に、力を分散するクッションのような働きをしています。また、歯根膜には知覚神経が通っていて、歯ざわりや歯ごたえを感じとることで、固いものは固く、柔らかいものは柔らかく噛めるようになっています。他にも歯槽骨に歯を固定させる役割や、歯根膜に走る神経や毛細血管から、歯周組織へ酸素や栄養を運ぶ役割を担っています。

歯槽骨

歯を支えている顎の骨のことで「歯槽突起」ともいいます。

セメント質

歯根の周囲を取り囲むようにしている柔らかい組織のことで、歯根膜線維を歯根に付着させる役割を持っています。

歯の発生

人の歯は、妊娠7~10週目に乳歯のもととなる「歯胚」がつくられます。永久歯の中で最も早く生えてくる第一大臼歯や前歯は、妊娠3~5ヶ月頃に歯胚ができ、ゆっくりと時間をかけて成長していきます。歯の生えかわりが始まる6歳頃には、顎の骨の成長とともに将来生える位置に移動して、生える準備が整えられていきます。

乳歯と永久歯

乳歯

一般的に、乳歯は生後6ヶ月頃に下顎の前歯が生え始めます。個人差があり、多少時期がずれたり、上の顎から生え始める場合もありますが、2歳半頃までに奥歯まで上下あわせて20本の乳歯が生え揃います。そして、永久歯一本一本が乳歯の奥に準備され、6歳頃に前歯の乳歯が抜け始めると、奥歯まで順に永久歯に生え変わっていきます。

乳歯の成長期

乳歯が生え始める時期(0〜3歳)を「乳歯列期」、乳歯が生えそろう時期(3〜6歳)を「安定期」、乳歯から永久歯へと生え変わる時期(6〜12歳)を「混合歯列期」といいます。混合歯列期は、永久歯へと生え変わる時に歯茎に痛みを生じたり、歯がグラグラするなどといった様々な変化が起こります。その際に、歯がグラグラするからといって、早めに乳歯を抜いてしまうと、抜いた穴から雑菌が入ってしまう場合があったり、永久歯が生えかかっているのに、いつまでも乳歯が抜けないでいると、永久歯の歯並びに影響がでてしまう場合があります。

また、乳歯は永久歯と比べて小さく、エナメル質は薄く弱いため、虫歯になると進行が早く神経まで達するような痛みを伴う虫歯になりがちです。そのため、下の前歯が生えてきたらガーゼなどでお手入れをおこないましょう。上の歯が生えてきたら、一日一回の歯磨きをおこなうようにしましょう。

永久歯

6歳頃から乳歯が抜け始めると、その後に永久歯が生えてきます。体の成長に伴い、顎の大きさに合わせた歯が必要になることや、多くの食べ物を噛む強い力に耐えられる丈夫な歯が必要になるために、乳歯から永久歯へと生え変わるのです。

永久歯の数は、乳歯の抜けた後に生えてくる「代生歯」の20本と、成長に伴って新しく生えてくる奥歯の「加生歯」の12本を合わせた計32本です。加生歯の中の「親知らず」は、人によって生えてこない場合もあります。

永久歯の成長期

6歳頃に、乳歯の奥に最初の永久歯である「6才臼歯」が生えます。
これは、物を噛み砕く力が一番大きく、永久歯の歯並びや噛み合わせの基本となる重要な歯です。その後、前歯から順次抜け変わっていき、12歳頃までに永久歯が揃ってきます。その間は、乳歯と永久歯が混在している「混合歯列期」のため、歯の高さが違ったり、抜けた歯があるので、磨き残しが多くなりがちです。

永久歯も、生えてから数年はエナメル質が未熟で弱いため、虫歯になりやすいです。そのため、間食を少なくして、規則正しい食習慣をおこなうことが重要です。永久歯は唾液中のミネラル成分などによって、徐々に成熟した歯になるので、しっかり噛んで食事をすることで、唾液の分泌を促すことも大切です。

おすすめの記事