インプラントができないケース

インプラント治療は、顎の骨にインプラント体を埋入する外科手術を伴います。そのため、誰でもインプラント治療をできるというわけではないのです。

改善をすることが難しい疾患にかかっており、インプラント治療を絶対におこなうことができない「絶対的禁忌症」と、治療がおこなわれたことで専門医によってコントロールがなされ、手術に対するリスクが少ないと判断された場合、インプラント治療が可能になる「相対的禁忌症」があるため注意しましょう。

インプラント治療を絶対におこなうことができないケース(絶対的禁忌症)

1型糖尿病

1型糖尿病の方は、血糖値を下げる働きをするインスリンを合成・分泌する「膵β細胞」が破壊されることで、インスリン欠乏状態になり高血糖状態のため、微小血管の障害が起こりやすいことから、免疫力の低下により傷が治りにくく、細菌感染のリスクが高いだけではなく、骨の治癒やインプラント体と骨との結合に影響を及ぼすリスクが高いため、インプラント治療は絶対におこなうことができません。

糖尿病の方がインプラント治療をおこなう場合、HbA1c(血管の中でヘモグロビンがブドウ糖と結合したもの)が7.0未満であることが治療を受ける目安になります。空腹時の血糖値が180[mg/dl]以上の方はインプラント治療はおこなえません。

腎障害

腎透析を受けている方は、低カルシウム血症により骨質の低下が起こり骨結合が阻害されてしまいます。また、免疫能の低下による易感染性や易出血性などの手術に対するリスクも高いため、重度の腎障害がある方や腎不全で透析を受けている方はインプラント治療は絶対におこなうことができません。

自己免疫疾患

関節リウマチ、シェーグレン症候群などの膠原病や、天疱瘡などの自己免疫疾患にかかっている方が服用しているステロイド薬が、骨の治癒や骨結合に悪影響を及ぼすリスクが高いため、インプラント治療は絶対におこなうことができません。

放射線治療を受けている

放射線治療などを受けている方も、インプラント治療は絶対におこなうことができません。特に、顎の骨に放射線を受けている方は、インプラント治療により顎骨骨髄炎を起こす危険性があるため、その他の外科処置も全て禁忌です。

 血液疾患

血液疾患には、血友病などの先天性血液凝固因子欠乏症、血小板減少性紫斑病、急性白血病、慢性白血病、貧血などがあり、出血のコントロールができない血液疾患の方は、治療による免疫抑制が強いため、インプラント治療は絶対におこなうことができません。

場合によってはインプラント治療をおこなうことができるケース(相対的禁忌症)

2型糖尿病

インプラント体を埋込する手術をおこなう際に、糖尿病が改善されてご自身で血統コントロールされていることが前提です。インプラント治療後も血統コントロールされていることが重要となります。

重度の歯周病

重度の歯周病にかかっている場合、インプラント体を埋入してもインプラント周囲炎というインプラントの歯周病になってしまうため、インプラントが抜け落ちてしまう可能性があります。そのため、事前に歯周病の治療をおこない、改善すればインプラント治療をおこなうことができます。

顎の骨量が少ない

インプラント体を埋入するためには、十分な顎の骨量が必要です。そのため、骨の量が足りない場合は、他の部位の自家骨(自分の骨)を移植する方法や、骨再生治療をおこなって十分な骨の量を確保すれば、インプラント治療をおこなうことができます。

骨粗鬆症

骨粗鬆症は、特に閉経後の女性に多く見られる症状といわれています。骨粗鬆症になると歯槽骨も当然脆くなるため、手術が難しくなります。どうしても治療が必要な場合は、骨移植したり、骨造成の処置により、骨量が増えるのを待ってからインプラント治療をおこなう必要があります。ただし、ビスフォスフォネート製剤を服用されている方は、主治医と歯科医師との判断が重要になり、場合によっては治療がおこなえないこともあります。

高血圧症

血圧をコントロールされていない高血圧の方は、血圧コントロールされるまで手術はおこなうことができません。降圧薬を使用して血圧をコントロールされている場合でも、手術中の緊張により血圧が上昇し、止血困難となる場合や、術後出血が起こることもあるため、術中の生体反応を監視し、その変動を察知し異常事態を招かないよう対応し、手術でのストレスを軽減するために静脈内鎮静法を併用することで、インプラント治療をおこなうことができます。

肝機能障害

肝障害の代表はウイルス性肝炎、肝硬変、肝癌などがありますが、急性期あるいは末期でなければインプラント手術に直接の影響はありません。しかし、院内感染については十分な注意が必要です。また、肝硬変では出血が見られる傾向があるため、術中術後の出血が問題になる場合があるので注意が必要です。

その他のインプラント治療をおこなうことができないケース

子供

子供の顎の骨は成長段階であるため、顎の骨の成長に合わせて歯も動きます。その時期にインプラント治療をおこなっても、インプラントが動いてしまったり、健康な歯にインプラントが当たることで悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、インプラント治療は、顎の骨の成長が終わる成人になってからおこなうことが良いとされています。

妊娠中・授乳中の方

インプラント治療には、レントゲン撮影や麻酔、出血を伴う外科手術をおこないます。さらに、術後には抗生物質や痛み止めの薬などが処方されるため、これらが母体や胎児に何らかの悪影響を及ぼす可能性があるため、インプラント治療はおこなうことができません。

喫煙者

タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素が、血管を収縮させることにより血流が悪くなるため、栄養や酸素や歯茎に送られにくくなります。そのため、傷が治りにくく骨結合にも悪影響を及ぼすため、治療中は禁煙が必要です。また、治療後の喫煙もインプラント周囲炎のリスクを高くしてしまうので、治療を良い機会として禁煙することをお勧めいたします。

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